2026年7月、パチンコ・パチスロの「参加人口」の推計が3つ、立て続けに公表されました。 そして数字が揃いませんでした。690万人(レジャー白書の前年確定値)、902万人(エムズマーケティング)、1,609万人(ダイコク電機のDK-SIS白書)。同じ国の同じ遊技の人口が、2.3倍も食い違っています。
どれかが嘘をついているわけではありません。測り方が違うだけです。そしてこの「測り方の違い」の中に、打ち手にとって極めて実務的な数字が埋まっています。平均的な打ち手が1時間・1回・1年でいくら負けているかです。順に見ていきます。
何が公表されたか
| 調査 | 公表 | 参加人口 | 測り方 |
|---|---|---|---|
| レジャー白書2026(日本生産性本部)速報版 | 2026年7月16日 | 参加率7.4%(前年比+0.3pt)。人口の確定は10月の本冊。前年版の確定値は690万人(2024年) | 2026年2月のインターネット調査。15〜79歳の有効回答3,279(参加率は18歳以上で算出) |
| パチンコ・パチスロプレイヤー調査2026(エムズマーケティング)速報版 | 2026年7月 | 902万人(前年865万人・37万人増) | 2026年3月下旬のWEBアンケート。スクリーニング34,871サンプル、本調査1,500サンプル |
| DK-SIS白書2026年版(ダイコク電機) | 2026年7月15日 | 約1,609万人(2025年・18歳以上人口の約15%) | 実営業データとファン行動データからの逆算。17年ぶりのファン人口推計 |
レジャー白書の速報版では、参加率が微増した一方で年間平均活動回数は25.5回(前年比5.5回減)、年間平均費用は9.3万円(同3,100円増)と報告されています。「打つ人は少し増えたが、1人が行く回数は減った」という形です。
エムズの調査では、パチンコ811万人(33万人増)・パチスロ714万人(54万人増)で、パチスロの伸びがパチンコを上回りました。20代以下は2021年の164万人から250万人へ約1.5倍に回復しています。
なぜ2倍以上も食い違うのか
決定的な違いは、アンケートで人に聞いたか、実際の営業データから逆算したかです。
レジャー白書とエムズの調査は人に聞く方式です。「過去1年にパチンコを打ちましたか」と尋ね、その比率を人口に掛けます。この方式は、打った回数が少ない人ほど「打った」と答えにくいという性質を持ちます。年に1〜2回の付き合いで打った人は、自分を「パチンコをする人」と認識していません。
DK-SISは逆算方式です。ダイコク電機が公表した計算はこうです。
| 要素 | 値 |
|---|---|
| 1人あたりの客遊技時間 | 2.98時間 |
| 時間粗利(ホールが1時間で得る額) | 820円 |
| → 来店単価 | 2,446円 |
| 年間来店回数 | 63回 |
| → 1人あたり年間消費金額 | 15万4,098円 |
| 業界総粗利 | 2.48兆円 |
| → 参加人口 = 2.48兆円 ÷ 15万4,098円 | 約1,609万人 |
この計算は自分で検算できます。2.98時間 × 820円 ≒ 2,446円、2,446円 × 63回 = 15万4,098円。業界全体が抜いた粗利を、1人あたりの年間負け額で割れば人数が出るという発想です。
ここで数字の性質の違いに注意してください。レジャー白書の9.3万円は自己申告の「年間費用」、DK-SISの15万4,098円は粗利からの逆算です。定義も母数も違うので単純比較はできませんが、方向としては示唆的です。前年確定値の690万人に9.3万円を掛けても約6,400億円にしかならず、DK-SISが前提に置いた業界総粗利2.48兆円の4分の1程度です(年がずれる点は割り引いて見る必要があります)。
つまり、アンケートで積み上げた数字だけでは、ホールが実際に抜いている額を説明できない。人は自分の負けを実際より小さく記憶します。これは統計の癖であると同時に、打ち手自身の癖でもあります。
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ここが本題です。3つの推計のうち、打ち手が直接使えるのはDK-SISの逆算値です。粗利は打ち手の負けの合計なので、この数字はそのまま平均的な打ち手の負け額として読めます。
1. 自分の収支を平均線と比べる
| 単位 | 平均的な打ち手の負け |
|---|---|
| 1時間あたり | 約820円 |
| 1回の来店あたり | 約2,446円 |
| 1年あたり(年63回想定) | 約15万4,098円 |
この線の意味は単純です。何も考えずに座り続けると、1時間ごとに約820円ずつ削られる。期待値稼働とは、この平均線の反対側に立つことです。
具体的な使い方は3つあります。
- 今日の収支を「回数×2,446円」と比べる。10回通って収支がマイナス2万円なら、平均(マイナス2万4,460円)よりはましという位置づけになります。勝てていなくても、平均より上か下かは意味のある指標です
- 時給で見る。1時間あたりプラスマイナスゼロで帰れれば、平均より820円分だけ上に立っています。期待値プラスの台を打つとは、この820円を反転させる作業です
- 年単位で見る。年間収支がプラスマイナスゼロなら、平均的な打ち手より年15万円分だけ上にいます。「トントンだから意味がない」ではありません
2. 「記憶」ではなく「記録」で比べる
アンケートの9.3万円と逆算の15万4,098円の開きが示すのは、人は負けを過小に見積もるということです。勝った日は覚えていて、負けた日は「まあこんなもん」で処理される。この歪みは、自分の期待値判断そのものを狂わせます。
だから記録が要ります。収支管理の考え方は当サイトの基本ですが、今回の数字はその根拠を1つ増やしました。業界全体の統計ですら、自己申告では実態に届かない。個人の記憶ならなおさらです。記録した収支はデータ分析で月次・機種別に見られます。
3. 若年層の増加は「競合の増加」
エムズの調査では20代以下が2021年比で約1.5倍(164万人→250万人)、パチスロ参加者に占める20代以下の割合は3割台前半まで拡大しています。これは打ち手にとって朝一の抽選倍率・人気機種の台の取り合い・ハイエナの競合が増える方向です。
ただしこの数字はエムズ1社の調査であり、レジャー白書は活動回数の減少を報告しています。「人は増えたが、1人あたりの稼働は減っている」という読み方もできます。若年層増加については、通っているホールの実感と突き合わせて判断してください(単独ソースの傾向として扱うのが安全です)。
今後の見通し — 確定している範囲だけ
- レジャー白書2026の本冊は2026年10月刊行予定で、2025年の参加人口と市場規模はそこで確定します。速報版の段階では参加率7.4%までしか出ていません
- DK-SISの1,609万人は17年ぶりの推計で、過去の推計との連続性は限定的です。来年以降も同じ手法で出るかは現時点で未確認です
- 3つの推計の食い違いは手法の違いによるもので、どれかが訂正される類の話ではありません。用途に応じて使い分けるのが正しい扱いです。市場の大きさを語るなら実データ由来、人の広がりを語るならアンケート由来
- 市場規模の長期推移とホール経営法人の実態を併せて見ると、「店は減り、残った店に客が集まり、打ち手の総数は測り方しだい」という2026年の業界像が見えます
よくある質問
Q. 結局、パチンコ人口は何人なのですか?
「何を人口と呼ぶか」で変わります。自分をパチンコユーザーだと認識している人はレジャー白書やエムズの調査に近く、年に数回でも打った人まで含めるとDK-SISの推計に近づきます。どちらかが間違っているのではなく、定義と手法が違います。
Q. 1時間820円負けるというのは本当ですか?
ダイコク電機が公表した時間粗利の値です。粗利はホールの取り分であり、打ち手の負けの合計にあたるため、平均的な打ち手の負け速度として読めます。ただし平均値なので、打つ台・レート・立ち回りによって実際の数字は大きく変わります。あくまで比較の基準線として使ってください。
Q. 年間15万円という数字は、自分に当てはめていいですか?
年63回来店という前提つきの平均です。通う頻度が違えば額も変わるので、自分の来店回数に2,446円を掛けたほうが実態に近くなります。重要なのは金額そのものより、自分の収支が平均線の上か下かを把握することです。
Q. 若年層が増えているなら、業界は回復しているのですか?
参加人口は増加傾向と報告されている一方で、レジャー白書は年間の活動回数の減少を報告しています。「打つ人は増えたが1人あたりは打たなくなった」という形で、打ち手にとっては台の競合が増える方向に効きます。ホールの数自体は減り続けています。
まとめ
- 2026年7月に参加人口の推計が3つ公表され、690万人(レジャー白書の前年確定値)・902万人(エムズ)・1,609万人(DK-SIS)と2.3倍の開きが出た
- 違いの原因はアンケートか、実営業データからの逆算か。アンケート由来の額を積み上げても業界の粗利には届かず、人は負けを過小に記憶するという癖が統計にも表れている
- DK-SISの逆算値は打ち手が直接使える。平均的な負けは1時間820円・1回2,446円・年15万4,098円。検算可能な数字
- 期待値稼働とはこの平均線の反対側に立つこと。年間収支がトントンでも、平均より15万円分は上にいる
- だから記憶ではなく記録で比べる。月次・機種別の実績はデータ分析で確認できる
- 20代以下の増加(約1.5倍)はエムズ1社の調査。競合の増加として読みつつ、単独ソースの傾向として扱う
- レジャー白書の本冊は10月刊行予定。2025年の参加人口と市場規模が確定しだい追記します
