無名メーカーを大手にした一台──『吉宗』という事件

無名メーカーを大手にした一台──『吉宗』という事件

ラクパチ編集部|7分

2003年、パチスロ界に一台の怪物が現れました。『吉宗』——その大ヒットは、当時まだ無名に近かったメーカー大都技研を、一気に業界の主役へと押し上げました。

一台の台が、メーカーの運命を丸ごと変える。まさに"事件"と呼ぶべき吉宗の伝説を辿ります。

業界初の「シャッター付き液晶」

吉宗が技術的に画期的だったのは、業界初のシャッター付き液晶を搭載したこと。液晶の前に物理的なシャッターが開閉する演出は、当時としては斬新で、プレイヤーに強烈な印象を残しました。

そして忘れられないのが、大量獲得のBIGボーナス(711枚)と1G連(1ゲームでの連チャン)の破壊力、さらに「キーン」という独特の爺BIGの告知音。この音を聞くために打った、という人も多いはずです。ゲーム性・演出・音——すべてが噛み合った完成度でした。

約26万台という記録

吉宗の凄まじさは、設置台数に表れています。ピーク時の設置台数は約26万台(2005年11月頃)とされ、これはパチスロ機として、約60万台の『北斗の拳』に次ぐ、当時歴代第2位の記録だったといわれます。

無名に近かったメーカーの台が、業界2位の設置台数を叩き出す。これは異例中の異例でした。しかも人気はホールの外にも波及し、PS2のシミュレーターは50万本超、サウンドトラックも累計30万枚規模を売り上げたとされます。台がひとつのコンテンツとして、社会現象になったのです。

※設置台数・販売本数などの数値は事典類の記述に基づく概要です。正確な数字はメーカー資料等でご確認ください。

「買わせてください」伝説の真偽

吉宗の伝説として、こんな逸話も語られます。「導入を断っていたホールが、あまりの人気に態度を変えて"買わせてください"と頭を下げた」

無名メーカーが立場を逆転させた痛快な話ですが——この逸話は、出どころが二次的な記述にとどまり、ソースとしては弱いのが正直なところ。誇張が含まれている可能性が高く、「そう語られている」以上には踏み込めません。とはいえ、こうした伝説が生まれること自体、吉宗の衝撃の大きさを物語っています。

名機は、判例の中にも登場する

面白い余談があります。パチスロの歴史に残る体感器ゴトの最高裁判例触ってないのに窃盗──体感器ゴトと最高裁判例参照)で、その対象となった機種が、実は吉宗系の台だったとされます。

人気機種は、ヒットの記録だけでなく、こうした事件・判例の舞台にもなる。名機は、良くも悪くも時代の中心に立つ——吉宗もまた、その一台でした。

一台が歴史を動かすということ

吉宗の物語は、「無名メーカーを大手に押し上げた一台」というシンプルで強烈な事実に集約されます。技術(シャッター液晶)、演出(爺BIG)、記録(26万台)、そして社会現象化。すべてが揃った、まさに"事件"でした。

一台の名機が、メーカーの運命も、業界の勢力図も変える。それがパチスロという世界の面白さです。名機がどう文化を作ったかは社会現象になった名機の文化史、大都技研の歩みはパチンコメーカー社名の秘密、ほかの機種伝説はパチンコ・スロット都市伝説10選からどうぞ。

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